視覚障害者のパソコン・インターネット・携帯電話利用状況調査2007

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■ 調査の概要

調査報告書D-267の表紙

背景と目的

  前回(2002年)の調査より5年が経ち,視覚障害者のICT(情報通信技術)利用状況にも様々な変化が生じています。とりわけ,インターネットの利用が一般的になったことと,視覚障害者にも使いやすい携帯電話が普及したことが挙げられます。そこで最新の利用状況を捉えるため,2007年5月から6月にかけて,視覚障害者のパソコン・インターネット・携帯電話の利用状況を調査しました。
  調査結果をWebサイトなどで公表することで,視覚障害者支援技術のニーズを研究者・開発者らに伝え,最終的に視覚障害者の福祉に役立たせます。


方法

  調査票への任意回答方式で調べました。回答者の募集方法は,視覚障害関連メーリングリストへの案内,視覚障害者用施設への調査票(点字版・拡大印刷版)の配備,視覚障害者向け新聞・放送による案内,筑波技術大学学生への協力依頼の4種類を活用しました。


結果

回答者

  有効回答者は413人となりました。回答者の年齢は14歳から80歳の範囲に分布し,平均は45.8歳でした。障害等級1級(284人)と2級(89人)という重度視覚障害者が90%を占めました。視覚を使って文字の読み書きができるかを尋ねたところ,できると答えた人が125人(30.3%),できないと答えた人が288人(69.7%)でした。

本調査への回答者の属性を,厚生労働省の平成18年身体障害児・者実態調査の結果と比べました。利用状況調査2007に答えたのはどんな人たちか?のページをご覧下さい。

携帯電話の利用状況

  回答者の92%が携帯電話を利用していました。視覚的な文字の読み書きの可否による利用率の大きな差はありませんでした。一方,年代が上がるほど利用率が下がる傾向が見られました。多くの回答者が,大きな文字や音声読み上げ機能付きの中高齢者向け機種を使っており,その利用率は7割を超えました。視覚的な文字の読み書きができないと答えた人のほとんどと,できると答えた人の半分弱が音声読み上げ機能を利用していました。文字サイズの拡大は,視覚的な文字の読み書きができると答えた人の半分強が利用していました。携帯電話利用者のほとんどが通話機能を利用していますが,毎日利用する割合は通話より電子メールの方が高くなりました。視覚的な文字の読み書きができないと答えた人の方が電子メールとインターネットの利用率は低くなりました。また,年代が上がるほど,電子メールとインターネットの利用率は下がりました。携帯電話への要望として,視覚障害者に便利な様々な機能の搭載,スクリーンリーダ並みの読み上げ機能の実現,GPS機能の搭載,音声読み上げや文字の拡大等で利用できる機種/通信会社が増えることなどが挙げられました。

パソコンの利用状況

  回答者の約95%がパソコンを利用していました。視覚的な文字の読み書きの可否と年代による利用率の大きな差は見られませんでした。スクリーンリーダの利用率はパソコン利用者の約85%と高い数値でした。視覚的な文字の読み書きができないと答えた人の約95%,できると答えた人の約60%がスクリーンリーダを利用していました。画面拡大ソフトの利用率はユーザー補助の約4分の1でした。周辺機器・アプリケーションソフトの利用率と,利用者の多い製品について,2002年の調査結果と大きな差異は見られませんでした。ただし,点字電子手帳の利用率の伸びが見られました。電子メール,OCR,点字編集,自動点訳の各ソフトは,視覚的な文字の読み書きができないと答えた人の方が利用率が高くなりました。パソコン利用上の問題点として,音声対応の不十分さ,スクリーンリーダ/アプリケーションソフト/基本ソフトのフリーズ,画面の見づらさが多くの人から指摘されました。

インターネットの利用状況

  視覚的な文字の読み書きの可否,年代を問わず,パソコン利用者のほとんどがインターネットを利用していました。視覚的な文字の読み書きができないと答えた人の方が,インターネットの利用頻度は高くなりました。20代から60代の間では80%以上の人が週に4,5日以上利用していました。閲覧ソフトでは,ホームページ・リーダーとPC-Talkerの利用者が多く,複数のソフトを利用する人は全体の40.1%に上りました。情報収集,電子メールを利用目的とする人が最も多かったのですが,30代を中心にオンラインショッピングや情報発信の利用も多く見られました。閲覧内容は,10代から50代で趣味の情報収集が多いですが,30代と50代で生活実用上の情報収集,60代でニュース等の提供ページの閲覧が多いのが特徴的でした。利用時の課題として,視覚的に文字を利用する人では,文字サイズ,ユーザエージェント,ページレイアウト・構造に関する課題,視覚的に文字を利用しない人では,代替テキスト,動的なコンテンツ,ナビゲーションに関する課題が多いという傾向が見られました。


結論

  障害等級,視覚的な文字処理の可否,年代,職種等の観点から,パソコン,支援ソフト,周辺機器,アプリケーションソフトの利用状況,パソコン利用上の問題点を分析しました。分析結果から,支援ソフト・機器の開発対象や改善点を明らかにしました。

最終報告書

  最終報告書のPDFファイルとテキストファイルを研究所のWebサイトに掲載しました。報告書の冊子とCDの頒布も行っています。このリンクからご利用下さい。

■ 発表論文等


参考

 2002年にも同様な調査を行いました。その調査結果は視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用状況調査のページをご覧下さい。

 2000年にも同様な調査を行いました。その調査結果は視覚障害者のWindowsパソコン利用状況調査のページをご覧下さい。


謝辞

 本研究は,(財)電気通信普及財団による研究調査助成を受けて実施しました。


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Last updated: 2008年9月8日
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