視覚障害者による携帯電話・パソコン・インターネットの利用状況に関する調査 ○宮城愛美(筑波技術大学),渡辺哲也(国立特別支援教育総合研究所),南谷和範(東京大学先端研),長岡英司(筑波技術大学) 第8回日本ロービジョン学会学術総会・第16回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議(平成19年9月22日〜24日)発表資料 1.調査内容 視覚障害者による携帯電話、パソコン、インターネットの利用状況を調べた(2007年5月から6月にかけて実施)。 使用している製品やサービスの名称・頻度・用途・問題点などを調べた。 2.調査方法 回答者募集の方法は以下の5種類。 ・各種メーリングリストで回答者を募集。 ・点字版・拡大印刷版の調査票を施設等で配布(日本ライトハウス エンジョイ!グッズサロン、名古屋盲人情報文化センター、日本点字図書館)。 ・JBS福祉放送、点字毎日などで紹介。 ・筑波技術大の学生。 ・調査実施者及び協力者より点字版・拡大印刷版を知人に配布。 3.回答者 3-1 有効回答者数:413人 メール版:322人 点字版:31人 拡大版:24人 筑波技術大36人(点字版9人、拡大版27人) 3-2 年齢分布 10代…18人 20代…50人 30代…73人 40代…92人 50代…95人 60代…68人 70代…15人 80代…1人 不明…1人 全国の視覚障害者の年齢分布(『わが国の身体障害児・者の現状―平成13年身体障害児・者実態調査結果報告』)と比較すると、若年層が多い。 3-2 障害等級 1級…284人 1級(重複障害)…5人 2級…89人 3級…10人 4級…7人 5級…6人 6級…1人 なし…10人 不明…1人 全国の視覚障害者の等級(『わが国の身体障害児・者の現状―平成13年身体障害児・者実態調査結果報告』)と比較すると、1級が多く3級から6級が少ない。 3-3 墨字による読み書き できる…122人 できない…288人 不明…2人 3-3-1 級ごとの読み書きができる割合 1級…10.5% 2級…67.0% 3〜6級…85.2% 3-4 勤務先 自営…74人(17.9%) 大学およびその他学校…43人(10.4%) 民間企業…38人(9.2%) 病院及び治療院…30人(7.3%) その他…24人(5.8%) 福祉施設…19人(4.6%) 公益法人及びその他の団体職員…13人(3.1%) 官公庁…9人(2.2%) 学生…46人(11.1%) 無職…115人(27.8%) 4.携帯電話の使用実態 携帯電話の利用者数: 380人/413人(92%) 4-1 使用キャリア 2台目を持っている人が9人おり,それを併せると以下の通り。 DoCoMo:296人 au(TU-KAも含む):62人 SoftBank(J-Phone, Vodafoneも含む):10人 WILLCOM:9人 全国の状況はNTT DoCoMo(51%)、au(28%)、SOFTBANK(16%)、WILLCOM(5%)の順であった。 (2007年6月、社団法人電気通信事業者協会調べ) 4-2 利用機種ベスト3 1位:F882iES(FOMAらくらくホンV):158人 2位:F881iES (らくらくホンU) :48人 3位:F672i (らくらくホンV) :18人 4-3 携帯電話の利用目的と頻度 通話 ・毎日使う…141人 ・時々使う…230人 ・使わない…3人 メール ・毎日使う…175人 ・時々使う…123人 ・使わない…74人 インターネット ・毎日使う…97人 ・時々使う…142人 ・使わない…129人 メールを毎日使う割合は,通話よりも高い。 4-4 利用している補助機能 墨字の読み書きができないと回答した人249人のうちでは, ・音声読み上げ…243人 ・文字サイズの拡大…74人 ・色設定の変更…50人 ・その他…28人 ほとんどが音声読み上げを利用。墨字を使用しないにもかかわらず、 文字や色設定の変更を答えた人が10名程度ずついる。 墨字の読み書きができると回答した人98人のうちでは, ・音声読み上げ…52人 ・文字サイズの拡大…64人 ・色設定の変更…39人 ・その他…12人 文字サイズの拡大と色設定の変更が多いが,音声読み上げも多い。 4-5 携帯電話に望む機能 ○入出力機能の向上 ・漢字変換をパソコン並みに ・画面の拡大やコントラストをより良く ・触ってわかるボタン ・音声読み上げの十分な対応 ○新機能の付加 ・ワンセグ、電子マネー、GPSによるナビ ・録音機能、拡大読書機のような機能 5.パソコンの使用実態 パソコンの利用者数: 391人/413人(95%) 5-1 スクリーンリーダは何を使っていますか? 1番頻繁に使っているもの(n=330) PC-Talker…174人 95Reader…82人 VDM…45人 JAWS…17人 CatWalk…3人 FocusTalk…1人 順位を無視して集計した場合 PC-Talker…223人 95Reader…119人 VDM…64人 JAWS…63人 CatWalk…18人 FocusTalk…15人 xpNavo…15人 PC-Talkerが圧倒的に多い。95Readerはその半分。 JAWSは2番目以降に使われる数が多い。 1人のみの回答:ALTAIR、grassroots、ドキュメントトーカ、デスクトップ・リーダー、Win-eyes、Vocal-eyes。 5-2 使用しているソフト 5-2-1 文書作成ソフト Microsoft Word…241人 MyEdit…87人 MyWord…76人 メモ帳…38人 一太郎…21人 ALTAIR…16人 WZ Editor…16人 MMエディタ…14人 Wordのシェアが圧倒的に高いものの、使用されている種類は多い。 5-2-2 表計算ソフト Microsoft Excel…264人 StarSuite Calc…2人 ロータス123…2人 三四郎…1人 ほとんどをExcelが占める。 5-2-3 メールソフト MMメール…150 MyMail…134 Microsoft Outlook Express…32 Winbiff…23 VoicePopper…16 Microsoft Outlook…12 視覚障害者向け,または視覚障害者の利用に対応したソフトが上位を占める。 6.インターネットの使用実態 インターネットの利用者数: 386人/413人(93%) (ただし,パソコンからインターネットを利用している人数。  携帯からのみインターネットを利用している人は除く) 6-1 インターネットの使用頻度 ほぼ毎日…299人 週に4、5日…43人 週に3日以下…22人 月に数日…12人 無回答…10人 4人に3人がほぼ毎日使用する。 6-2 使用しているWeb閲覧ソフト 1番頻繁に使っているもの HPR…117人 PC-Talker…105人 95Reader…30人 VDM…21人 JAWS…16人 ボイスサーフィン…4人 サーチエイド…3人 使用頻度を無視した複数回答 HPR…165人 PC-Talker…146人 95Reader…43人 JAWS…37人 VDM…30人 サーチエイド…13人 Web閲覧ソフトではホームページリーダの利用が圧倒的に多い。他はスクリーンリーダにより閲覧している。 6-3 インターネット利用目的 情報収集(各種情報の検索と閲覧など)…368人 電子メール…346人 オンラインショッピング(チケット購入、バンキング、オークションなど)…189人 情報発信(ホームページ・ブログの作成など)…117人 その他…48人 6-4 Web閲覧内容 趣味等の情報収集…320人 生活実用上の情報収集…306人 ニュース等の提供ページの閲覧…268人 仕事上の情報収集…189人 行政や公的団体のページの閲覧…187人 その他 …52人 6-5 インターネット利用時の問題点 ・メニュー・広告の多さ ・グラフィックによる文字表示のため音声読み上げできない ・キーボードだけでアクセスできない場合がある ・PDFが音声・拡大で読みにくい ・拡大画面で見ると文字の重なりやレイアウトの崩れがある