視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用状況調査2002

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■ 概要

調査報告書D-190の表紙

 この調査は,視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネットの利用状況に関するものです。視覚障害者の方々が,現在どのような機器,ソフトウェアを使っているか,どんな利用上の問題があるか,などの事項を調査しました。

 その調査結果は,

それぞれ参考にしていただきたいというのが,調査の趣旨です。

 このページでは,調査結果の一部を紹介しています。利用されているアプリケーションなどの詳細なデータは,報告書にまとめてあります。報告書は,印刷物,録音図書(カセットテープ),点字図書,CD-R(PDFファイル,Wordファイル,テキストファイル,BASEファイル,Win-BESファイルを収録)の各形態で随時提供しています。報告書の入手を希望される方は,メールにて渡辺までご連絡下さい。なお,印刷物,録音図書(カセットテープ),点字図書は,数に限りがありますので,残部がなくなりました際は,CD-Rの送付にてご了承下さい。

■ 目次

調査の実施

  1. 対象者
  2. 調査方法
  3. 調査事項

調査の結果

  1. 全回答者
  2. 職場のパソコン利用環境
  3. 自宅のパソコン利用環境
  4. インターネットの利用状況

参考


調査の実施

1. 対象者

 視覚障害者のための情報提供を目的としたメーリングリスト(下の(1)),2つの視覚障害者団体(下の(2),(3))のメーリングリスト,および,2つの視覚障害者団体(下の(4),(5))を主たる購読者とした個人的なメーリングリスト(参加者数約400人,視覚障害者が約6〜7割),に参加している視覚障害者で,スクリーンリーダを活用してWindowsパソコンを利用している人を対象とした。

  1. 視覚障害リソース・ネットワーク・視覚障害メーリングリスト(JARVI-ML)
  2. 中途視覚障害者の復職を考える会(タートルの会)
  3. 全国視覚障害教師の会
  4. 日本網膜色素変性症協会
  5. 弱視者問題研究会

 なお,これらのメーリングリストに重複して参加している者も存在する。

2. 調査方法

 上記4種類のメーリングリストにて回答者を募集し,応募者にテキストファイル形式の調査票を電子メールにて送付した。回答の回収にも電子メールを利用した。回答者の募集開始は平成14年6月21日,回答の締切りを同年7月7日とした。したがって,調査期間はおよそ2週間となる。

3. 調査事項

 質問事項は以下の通りである。

  1. 個人情報
  2. 職業情報
  3. 職場におけるWindowsパソコンの利用状況
  4. 自宅におけるWindowsパソコンの利用状況
  5. インターネットの利用状況
  6. Windowsパソコンの学習,および,利用上の問題点
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調査の結果

1.全回答者

 100人から回答を得た。ここから,スクリーンリーダをまったく使用していない回答者1人を除いた99人を有効回答者とする。

 回答者の内訳は以下の通りである。

年齢

平均年齢44.2歳

障害等級

使用文字

パソコン使用歴

平均使用歴10.0年

 99名のうち,職場のパソコン環境についての回答数は68,自宅のパソコン環境についての回答数は76,両方への回答数45であった。

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2.職場のパソコン利用環境

1. 職場のパソコン環境についての68名の回答者の内訳

年齢

平均年齢44.5歳

障害等級
使用文字
パソコン使用歴
平均使用歴11.4年

2. 職業情報

 回答者の職業の内訳は以下の通りである。括弧内の数字は人数を表す。

勤務先

(複数回答が1件)

職種
(複数回答が1件)

 特徴的に多かった勤務先と職種は、自営で理療を営む者が22名、大学およびその他学校における教員が13名、民間企業における一般事務職が5人であった。

3. 職場におけるWindowsパソコンの利用状況

3.1 使用時間

平均値は4.3時間

3.2 基本ソフト

3.3 ネットワーク環境

3.4 スクリーンリーダ

 回答者の43%は2種類以上のスクリーンリーダを使っていた。

最もよく使うWindowsのスクリーンリーダ
2番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ
3番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ
4番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ

使用頻度の順位を無視して,各スクリーンリーダの使用者数を求めると,

であった。

3.5 画面拡大

 スクリーンリーダとあわせて画面拡大ソフトを使っている回答者が5人いた。

3.6 ハードウェア

 視覚障害者用のハードウェアとして,点字ディスプレイ,点字プリンタ,点字電子手帳をそれぞれ17 名(25%)、16名(24%)、7名(10%)が使っていた。39名(57%)の回答者がスキャナを使っており、ほかのハードウェアと比べて利用率が高かった。

3.7 ソフトウェア

 職場でワープロおよびエディタを使っている回答者は65人(96%)、そのうちの50%は複数のワープロおよびエディタを使っていた。使用者の多かったソフトはMicrosoft Word(39)、MYEDIT、MYWORD、WZEditor(いずれも14)、MM-Editor(9)などであった。

 表計算ソフトを使っている回答者は44人(65%)で、使われているソフトは2例を除きMicrosoft Excelのいずれかのバージョンであった。

 職場で利用している電子メールソフトについての回答者は58人。回答数の多かった電子メールソフトはMM-Mail(37)、Winbiff(10)であった。

 OCRソフトを利用している回答者は44人、そのうち複数のソフトを使用している人が10人。視覚障害者用のOCRソフト(MYREAD,よみとも,ヨメール,らくらくリーダー)を39人が使用している。

(その他のアプリケーションの利用者数)

3.8 音声化対応の要望

 現在、職場で使えなくて困っているアプリケーションは28件挙げられた。そのうち回答数が多かったのは、ジャストシステムの一太郎(回答数7件)、MicrosoftのAccess(4)、Word(4)、Excel(3)、Outlook(1)、PowerPoint(2)であった。

3.9 MS-DOSの利用

Windowsパソコンと併せて、MS-DOSパソコンを利用している回答者は33人(49%)であった。その用途は、文書作成、点字編集、ファイル管理などであった。

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3.自宅のパソコン利用環境

1. 自宅のパソコン環境についての76人の回答者の内訳

年齢

平均年齢43.5歳

障害等級
使用文字
パソコン使用歴

平均使用歴10.1年

2. 自宅におけるWindowsパソコンの利用状況

2.1 使用時間

平均値は2.8時間

2.2 基本ソフト

2.3 ネットワーク環境

2.4 スクリーンリーダ

 2種類以上のスクリーンリーダを使っていた回答者は32人であった。さらにその中の9人が3種類,2人が4種類のスクリーンリーダを使っていた。

最もよく使うWindowsのスクリーンリーダ

2番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ 3番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ 4番目によく使うWindowsのスクリーンリーダ

 使用頻度の順位を無視して,各スクリーンリーダの使用者数を求めると,

であった。

2.5 画面拡大

 スクリーンリーダとあわせて画面拡大ソフトを使っている回答者が5人いた。そのうち3人がZoom Text Xtraを,2人がMicrosoft 拡大鏡を使っていた。

2.6 ハードウェア

 視覚障害者用のハードウェアとして,点字プリンタ,点字ディスプレイ,点字電子手帳をそれぞれ6人,11人,8人が使っていた。職場と比べると,点字プリンタをもっている回答者の割合が低い。職場同様スキャナの利用率は高く,46名(61%)であった。
 以下に,使用している機種を記す。点字プリンタ,点字ディスプレイ,点字電子手帳の欄では,1名だけが回答した機種も記載した。

点字プリンタ
点字ディスプレイ
点字電子手帳
スキャナ

2.7 ソフトウェア

ワープロおよびエディタ

 ワープロおよびエディタに対する回答数は64人。そのうち30人が複数の製品名を挙げた。

表計算ソフト

 表計算ソフトを使っている回答者は46人。使われているソフトはMicrosoft Excelがほとんどを占めた。

データベースソフト

 宛名管理などを含めたデータベースソフトは21人(29%)が使用。

プレゼンテーションソフト

 プレゼンテーションソフトは7人が使用。そのうち4人がMicrosoft PowerPointを,3人がその他を使っていると答えた。

電子メールソフト

 電子メールソフトについては72名から回答を得た。自宅のパソコン利用環境のみに回答した回答者で,電子メールについて記載がなかった1人については,メールのヘッダ情報より電子メールソフトを特定した。13名が複数の電子メールソフトを使っていた。

グループウェア

 自宅のパソコン環境ではグループウェアの使用は1人のみであった。

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4.インターネットの利用状況

 インターネットの利用状況に関する質問は回答者全員にお答えいただいたので,回答者数は99です。

 最初の質問では,インターネットの利用の有無を問いました。ここで,インターネットの利用とは,電子メールの送受信や,ホームページの閲覧を指しましたので,電子メールを使った今回のアンケートでは100%の回答者がインターネットを利用していることになります。

1. インターネットを閲覧するために使っているインターネット音声化ソフト,または,スクリーンリーダ

インターネット音声化ソフト

 回答数68。そのうち複数回答が11人。

スクリーンリーダ

 回答数63。そのうち複数回答が5。

2. インターネットの利用目的(複数回答)

 以上は,選択肢を設けた項目。以下は,「その他」として具体的に上げられた内容を分類した項目。

 上の情報の検索と入手について,さらに情報検索の種類と目的について尋ねた。

情報検索の種類と目的(複数回答)

 インターネットを情報検索に利用している人は95人。

 上の電子商取引について,さらに種類を尋ねた。

電子商取引の種類(複数回答)

インターネットを電子商取引に利用している人は47人。

3. インターネット利用時の問題

 以上は,選択肢を設けた項目。以下は,「その他」として具体的に上げられた内容を分類した項目。

インターネットへの接続や設定が自分一人でできなかったときの援助者
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参考

 2000年にも同様な調査を行っています。その調査結果は視覚障害者のWindowsパソコン利用状況調査のページをご覧下さい。


謝辞

 調査の実施に当たっては,小田浩一氏(東京女子大学),篠島永一氏(日本盲人職能開発センター),園順一氏(京都福祉情報ネットワーク)ほか多数の方々にご協力いただきました。

 調査データの集計・整理作業には,鹿倉元輝氏(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科学院生,以下同じ),三上奈美恵氏,吉川郷子氏,浅井紗和氏,笠原弘恵氏に手伝っていただきました。

 本研究は,(財)電気通信普及財団による研究調査助成を受けて実施しました。


■ 発表論文等


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Last updated: 2008年11月5日
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