昨今、これから出かけるレストランやイベント会場の位置など、Googleマップをはじめ、Webやケータイからさまざまな地図情報を検索閲覧できるサービスが一般向けに提供されている。ユニバーサロンでは昨秋開催した触図体験セミナーにおいて、これらの地図情報を視覚障害者にも利用できるように触図(立体コピー)に変換してみたものの、残念ながら独力で利用できるものにはならなかった。理由は、視覚による利用を目的とした一般の地図では情報があまりにも多すぎるためである。国土地理院では現在、Web上で日本全国の電子地図を無償提供するとともに、病院や学校などの公共施設を示す触図用の識別マークを定め、電子地図の触図への活用を進めているが、今後、点字図書データのデータベースであるナイーブネットのような、エンドユーザーが必要としている地図情報を自由にリクエストし、いつでもどこでも利用できるような全国的なサービスが望まれる。
 次に、交通バリアフリー法の施行とともに昨今各鉄道駅などで設置されることの多くなった点字構内案内図について、上記の一般向け地図情報同様情報が多すぎるため、点字触読に堪能な視覚障害者でも理解困難というのが実情である。特に、移動中に短時間で識別できることが前提となる交通機関・公共施設内の位置案内情報については、利用場面を充分考慮したユーザー中心のデザインが不可欠であると考える。また、点字構内案内図だけでなく、たとえば、JR横浜駅などで行っているように、立体コピーによる構内図を改札口などに設置し、視覚障害者が自宅や駅周辺の休憩所、飲食店などで時間の制約を受けることなく、閲覧できるようなモバイルサービスが普及することを要望したい。
 視覚障害者が環境を認知する上で触地図を用いることは有効な方法であると考えられる。この「環境の認知」ということには,環境内の対象物の把握やその位置付け,といったことも含まれると思われるが,本研究では一盲青年との教育的係わり合いの中から,環境内での目的地までの経路の把握という問題に焦点を当て,その経過を報告する。その結果,次の知見が得られた。
 バリアフリー新法等の影響もあり触知案内図が広く設置されるようになったが,従来は関連する規格がなかったために様々な方式が混在することになった。方式が異なる触知案内図では分かりにくいばかりではなく,誤った情報を伝えてしまう恐れが指摘されていた。
 2003年6月に日本工業標準調査会から『高齢者・障害者への配慮に係る標準化の進め方について(提言書)』が発行された。そこでは最優先ですぐに着手すべき標準化テーマとして13課題が挙げられ,その中に『視覚障害者に配慮した公共的施設等での案内地図の触覚図形等を規格化』も取り上げられた。この提言を受け,同年度半ばから2005年度末までの約2年半をかけて,JIS原案作成のための調査委員会が設置され,調査や評価実験を行いつつ検討を行った。最終的には,これらの成果をまとめて昨年3月に『高齢者・障害者配慮設計指針−触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法 JIS T 0922:2007』が制定された。
 本報告では,この間の調査委員会での取り組みおよび制定されたJISの内容について紹介する。
 国土地理院では、1993年度から目の不自由な方も晴眼者と同じように、身の回りの地理を知ることができる触地図を作成するためのソフト開発に取り組んできました。 1997年に数値地図2500(空間データ基盤)の地図データを利用した触地図作成支援システム(MS-DOS版)を開発しました。しかしながらこのシステムは、数値地図2500が作成されている地域に限定されていました。
 そこで、2003年7月から国土地理院においてインターネット上で公開している「電子国土Webシステム」の地図データを利用し、全国どこの地域でも触地図原稿を作成することが可能な、新たな「触地図原稿作成システム(Windows版)」を開発しました。「触地図原稿作成システム」は、国土地理院のホームページを使って2006年9月1日から一般に無料で試験公開しています。
 既に市販されている1536ドットのピンディスプレイと力覚センサを組合せることで,ユーザがピンディスプレイ上のどこを触っているかを認識するシステムを開発した。ピンディスプレイ上の触察位置がわかるので,ピンの凹凸として表現されているオブジェクトを素手により直接操作することが可能である。一例としてPC(パソコン)に表示されている複数のアイコンをピンの凹凸として表示し,それらを触察して判別し,クリックやダブルクリックを実行できる。スクリーンリーダとの融合も進めていることから触覚による簡単なGUI操作が可能であると考えられる。このような動的な触図ディスプレイの応用を考えると,空間情報を表現する媒体の一つである触図の代替が考えられる。この際,問題となるのは,従前の触図,触地図にも共通して言えることであるが,コンテンツの作成に膨大な時間と労力,人手が必要となることである。そこで,本システムではフルデジタルシステムである特徴を生かし,Webの画像やPCに取り込んだ画像に塗り絵感覚で音声情報を付加できるアプリケーションを開発し,簡便なコンテンツ作成を可能とする枠組みを提案する。
 パソコン用のタッチパネルと合成音声を利用することにより,地図の図形情報を触図で表し,テキスト情報を合成音声で出力する視覚障害者のための音声出力機能付き触図システムを試作した。本システムは点字の読み取りができない視覚障害者にも利用可能であるだけでなく,1枚の触図に載せられる地図情報の量を飛躍的に高めることを可能にした。また,触図と出力音声の情報の密度を変えることにより,触図によって全体像をつかみ,出力音声によって詳細情報を理解することを可能にした。さらに,触図と出力音声の組合せを変えることによって,都市地図,地形図,交通地図など何枚かに分けられた地図の相互関係の理解を容易にした。本システムは地図だけでなく,理工系の図面やゲームなどいろいろな分野への応用が可能である。
 研究談話会の様子をまとめた報告をヒューマンインタフェース学会誌用に書きました。下に,その原稿を掲載します。
Last updated: 2009年8月21日
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