スクリーンリーダにより,視覚障害者もパソコンで文字情報を処理できるようになりましたが,グラフィカル情報をリアルタイムで表示する触覚ディスプレイはまだ十分に普及していません。そこで,入手しやすい簡易な触覚ディスプレイを目指して,「触覚マウス」を試作しました。
触覚マウスとは,マウスの動きに応じた触覚情報をユーザの指先にフィードバックできるコンピュータマウスです。触覚情報を返す触覚ディスプレイは多くの場合,ユーザの人差し指と中指で触れられる位置に取り付けられます(下の図を参照)。元来,視覚障害者のグラフィカル情報へのアクセス手段として開発され,この目的のためには,複数の触知ピンが面状に並んだ触覚ディスプレイが用いられています。例えば,触地図を視覚障害者が認知する場合,触図の凸線に沿って指先を動かし,指先から順番に入ってくる触覚情報と,動かしている手の体性感覚情報とを合わせて,線の全体の形を想像する方策があります。触覚マウスによる触図の認知の機序は,このような観察に基いています。
画面の状態と,触覚ディスプレイのピンの上下との対応関係は下図のようになっています。画面上の線の付近にマウスポインタを近づけると触覚ピンが突出します。逆に,黒い画面ではピンは下がるので,グラフィカル情報の有無を触って知ることができます。スクリーンリーダの音声出力と組み合わせれば,グラフィカル情報の部分を触ると,ピンが出るだけでなく,音声で読み上げられ,マルチモーダルに情報を得ることができるようになるでしょう。
謝辞 触覚マウスの製作にあたっては,茨城大学教育学部の佐々木先生から多くの有益な資料を提供していただきました。また,須貝克美氏,為近哲夫氏,竹内恭彦氏(全員,東京電機大学大学院生(当時))には,それぞれ触覚マウス1号機,2号機,3号機製作の労をとっていただきました。4号機の製作は茨城大学工学部下条研究室との共同研究です(下条先生の現在の所属は電気通信大学です)。ご協力いただいた各氏に深く感謝いたします。
マウスカーソルの位置と触覚ディスプレイのピンの対応。
触覚マウス1号機(写真左)と2号機(写真右)
触覚マウス3号機(写真左)と4号機(写真右)
Last updated: 2006年 1月23日
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