盲・聾・養護学校Webサイトのアクセシビリティ調査 2005

■ 概要

 近年,公共的な機関のWebサイトのアクセシビリティ問題が注目を集めている。我々は,公共機関であると同時に,障害児・者の窓口となるべき存在である盲・聾・養護学校のWebサイトのアクセシビリティを点検した。その結果を以下に報告する。

■ 目次

調査の実施

  1. 調査対象
  2. 調査方法

調査の結果

  1. 優先度により分類した問題数
  2. JIS点検項目により分類した問題数

調査の実施

1. 調査対象

 全国の盲学校71校,聾学校106校,養護学校820校のうち,調査期間(平成17年1月4日から27日)内にWebサイトを確認できた608校(盲学校58校,聾学校65校,養護学校485校)を対象とした詳細は以下の通りである。

全国の学校数

合計997校

チェックできた学校数

合計608校

チェックできた学校の割合

全体61%

以上を表にまとめ,表1に示す。

表1 Web サイトのアクセシビリティを点検した特殊教育諸学校
種類全国の学校数 チェックできた学校数チェックできた学校の割合[%]
盲学校715882
聾学校1066561
養護学校82048559
合計99760861


2. 調査方法

 点検ツール(ソフト)として富士通のWebInspector ver.4を用いた。これは日本 工業標準(JIS)「高齢者・障害者等配慮設計指針」[1]に対応した点検が可能で, ソフトは富士通のWebサイトからダウンロードして無料で利用できる[2]。

 点検ツールが問題とした項目は,修正の必要性が高いものから順に「優先度1〜 3」及び「その他」の4種類のカテゴリに分けられる。さらに,各カテゴリ内で 「修正」または「確認」の2種類に分けられ,合計8つのカテゴリごとに問題項 目の個数が表示される。これらの数が少ないほどアクセシビリティが高い。この カテゴリとは別に,JISの点検項目のうち19項目に対応した問題の数も出力され る。

 今回はWebサイトのトップページのみを点検した。大部分のサイトではトップに HTMLファイルを指定しているのでこれを点検した。トップにスタイルシートを使っ ていた41校では,HTMLファイルとCSSファイルの両方を点検し,両者の問題数を 加算した。トップにフレームファイルを利用したWebサイトはコンテンツがチェッ クされないので,そのような学校288校(盲学校9校,聾学校34校,養護学校245 校)は調査集計から除外した。


調査結果

1. 優先度により分類した問題数

グラフ:全問題数の度数分布ヒストグラム
図1 全問題数の度数分布(角柱,左の目盛り,単位:学校数)と累積度数(折れ線,右の目盛り,単位:%)

 指摘された問題は優先度1と2だけであった。両カテゴリの問題数を加算した数 値を横軸のデータ区間(5刻み)とし,学校数を縦軸とした度数分布が図1であ る。問題数5以下の区間に最も多くの学校が集まっている(171校, 28.1%)。 また,調査対象全体の7割以上の学校で問題数が25以下であることが累積度数か らわかる。他方で,問題数が100を超えた学校も少数だが見られた。これらの状 況は,盲・聾・養護学校間で大きな違いはなかった。

 学校種別ごとに,各優先度の問題数の平均値を比較した。

優先度1 修正

優先度1 確認

優先度2 修正

優先度2 確認

以上を積み上げた横棒グラフとしてまとめ,図2に示す。

グラフ:盲・聾・養護学校のWebサイトにおける問題数の平均値比較
図2 問題数の平均値を学校種別間で比較

 全体として盲学校の問題数が聾・養護学校に比較して低くなっている。特に「優先度1 修正」が聾・養護学校に比べ低い点は注目すべきである。聾・養護学校間の差については,全体・優先度区分いずれの観点からも目立った違いは見られなかった。

2. JIS点検項目により分類した問題数

 JISの点検項目ごとに問題を計数すると,5.2c,5.4a,5.4b,5.6a,5.6c,5.9a (これらはいずれも,JIS X 8341-3における項目番号[1])の各点検項目では, 平均問題数が他の項目に比べて多かった。 JIS点検項目ごとの問題数を学校種別間で比較したグラフを図3に示す.

グラフ:JIS点検項目ごとの問題数を学校種別間で比較
図3 JIS点検項目ごとの問題数を学校種別間で比較

各項目の内容を見ると,5.2cは,表に適切なタイトルや要素のマーク付けがない, 構造が複雑であるなどの問題である。5.4a と5.4b は,画像にテキストなどの代 替情報が提供されていない問題で,視覚障害者のための配慮事項として各所で例 示される。5.6aは,文字のサイズとフォントを固定している問題である。文字の 属性を固定すると,弱視等の理由でそれらの変更が必要なユーザのページ閲覧を 妨げるおそれがある。学校種別間で比べると,盲学校は聾・養護学校に比較して 5.4a,5.4b,5.6aの問題数が少なかった。5.6cは,文字色と背景色のコントラス トが原因で文字が読みにくい問題で,他の項目に対して顕著に数が多かった。こ れは,盲・聾・養護学校とも極端に問題数が多い(100以上)学校が数校存在し, これらが平均値を上げたためである。5.9aは,使用している自然言語を明記して いない問題である。

■ 参考文献

[1] JIS X 8341-3「高齢者・障害者等配慮設計指針ー情報通信における機器,ソフトウェア及びサービスー第3部:ウェブコンテンツ, 日本規格協会, 東京, 2004.
[2] 富士通アクセシビリティ・アシスタンス http://design.fujitsu.com/jp/universal/assistance/

■ 発表原稿

■ 謝辞

 本ページを作成して頂いた山口俊光氏に感謝いたします。


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Last updated: 2006年 1月23日
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