昨年行ったAcrobat 7,AdobeReader 7のアクセシビリティ調査に引き続き,Acrobat 8 / Adobe Reader 8のアクセシビリティについて調査を行いました。ここでは,Acrobat自身の読み上げ機能と,従来のAcrobatとの違いを中心に説明します。
スクリーンリーダを使用せずに音声読み上げを行う[読み上げ]機能に[読み上げを起動]という項目が追加された。
この[読み上げを起動]は,Adobe Readerの [表示]>[読み上げ] のサブメニューに追加された項目である。 ショートカットキーとしてShift + Ctrl + Yが割り当てられている。この項目を実行すると,Adobe Readerが読み上げを行うモードに切り替わる。
このモードで使用するキーは,主に上矢印キーと下矢印キーである。下矢印キーを押すと読み上げ対象を先に進めることができ,上矢印キーで前に戻すことができる。 このとき,読み上げ対象の移動はPDFに埋め込まれたタグ単位である。上下矢印キーで読み上げ対象が切り替わる順序もタグで定められた順序になる。
さらに,読み上げ対象となっている部分には,枠が表示されるようになった。
この[読み上げ]機能を使用するためにはSAPI5に対応した音声合成エンジンが必要である。 Microsoft Excelをインストールすると,"LH Kenji"(男性音)と"LH Naoko"(女性音)というSAPI5に対応した音声合成エンジンがインストールされるので,これらが使用できる。
[完全チェック]で,公的なWebアクセシビリティガイドラインに沿ったアクセシビリティチェックが行えるようになった。 以下の4種類のガイドラインに対応している。
「Adobe PDF」でチェックした場合は,発見された問題点の箇所と,問題となった理由,解決方法がそれぞれ示される。これは,従来の[完全チェック]機能を使った場合と同様である。
「Adobe PDF」以外の基準でチェックした場合,適合している項目,適合していない項目,手動でのチェックが必要な項目が,それぞれガイドラインの項目番号で列挙される。作成者は各ガイドラインの当該項目番号を参照しながらPDF文書を修正していくことになる。
[完全チェック]機能でチェックを行う項目に,[箇条書き構造とテーブル構造の適合性]が追加された。
チェック項目を設定するダイアログに,以下のような免責事項が追加された。
アクセシビリティチェッカを使用すると、参照しているガイドラインの Adobe による解釈と矛盾している可能性がある箇所を文書中で特定できます。ただし、アクセシビリティチェッカは、実際に参照しているガイドラインも含めて、アクセシビリティに関するすべてのガイドラインや基準に基づいてチェックしているものではなく、Adobe はお客様が作成した文書がいかなる特定のガイドラインまたは規制に準拠していることを保証するものではありません。ソフトウェアのアクセシビリティチェッカは万能ではない。 チェッカで問題が検出されなくても,実際に人間が利用すると問題が発生することがよくある。 逆にチェッカで問題が検出されていても,実用上問題がないこともある。 このことが,免責事項として明記された。
[Touch-Up読み上げ順序]機能に新しいタグ[テーブル]が追加された。 この表に適用するタグにスクリーンリーダが適切に対応すれば,表として理解しやすい読み上げが可能になる。
テーブルインスペクタというツールを使うことで,表の各セルに「ヘッダ」か「データ」のいずれかの属性を付与することができるようになった。これによりHTMLでthタグやtdタグで表現するように表を作成することが可能となった。
ヘッダ属性にはスコープ属性を付与することができるので,その見出しが行方向に意味を持つのか,列方向に意味を持つのか,またその両方なのかを指定できるようになった。
本ページの原版を作成して頂いた山口俊光氏(特総研,科学研究支援員)に感謝いたします。
Last updated: 2007年 1月23日
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