本研究では,点字用紙と点字ディスプレイでの触読の様子を分析し,点字の表示行数による違いが読み手に与える影響を明らかにする.実験から,参加者全員が点字ディスプレイ条件で触読速度が遅くなることが分かった.この理由を明らかにするために触読動作を分析したところ,点字ディスプレイ条件の場合,手の移動やキー操作など,点字読み以外の動作の時間が長いことが分かった.これが,触読速度が遅くなった理由だといえる.
 視覚障害者が家電製品をリモコンで操作する場合,リモコンを探したり,家電製品ごとに複数のリモコンを使い分けたりするのに手間がかかる.これらの問題解決のため,音声で家電製品を操作できるスマートリモコンを視覚障害者に試用してもらった. 試用後のアンケートの結果,視覚障害者にとってスマートリモコンはリモコンの使い分け,探すこと,ボタンの押し分けが不要な点が便利と評価された.他方で,スマートリモコンの音声フィードバックの情報量の少なさや,音声コマンドが正しく実行されないといった点が不便と評価された.
 3Dプリンタを用いて人体の関節模型を作成した.その作成過程で盲学校理療科教員1名の助言を得た.関節模型を他の盲学校教員13人に評価していただいたところ,関節模型の大きさ,形状,動き,可動域は,おおむね高評価であったが,球関節,臼状関節,らせん関節については,形状の修正が必要なことが分かった.さわり心地の評価はあまりよくはなく,全体的に滑りやすいという回答があった.そのため,今後,材質を変えることを考えている.
 これまで,心拍間隔の変動(心拍変動)成分を用いたストレス評価方法は短時間計測でしか確立していない.そこで本研究では,長時間計測の可能性を探る.心拍の計測は身体活動の影響が少ない睡眠時に行い,実験参加者には就寝前と起床時にストレスに関する主観的な評価を取ってもらった.分析の結果,心拍変動の成分と主観評価との間に関係性は見られなかったが,分析方法の改善に向けて価値のあるデータが得られた.
 聴覚障害者へのカーリング指導で音声文字変換アプリを使用することがある.しかし,距離が離れると認識率が下がるためBluetoothマイクを導入した.本研究では,Bluetoothマイクの有用性を,スマートフォン内蔵マイクとの対照実験で検証した.その結果,Bluetoothマイクでは距離が離れても指示が伝わりやすい傾向が見られた.理由は,マイクと指導者との距離が短く保たれるためだと考えられる.加えて,環境音によって伝わりやすさに差が出ることもわかった.
 本研究では視覚障害者にとって触察に用いる立体模型の需要が高いことから,3Dプリンタを用いて建築物模型を制作する. 建築物3Dデータ作成にはフリーの3D CADソフトSketchUp for Webを使用する.建築物模型は知名度の高さから,新国立競技場と国会議事堂を制作する.3Dデータを用いて印刷した立体模型は視覚障害者のためのシンポジウム参加者に送付し,触察による評価を得る.評価をもとに今回制作した建築物模型の有用性や改善点について考察する.
 これまで触地図内の標的の探索戦略の分類は,評価者が手の軌跡を見た主観によって行ってきた. この分類を機械学習によって客観的・定量的に行うため,ノーコードで機械学習モデルの作成が可能なLobe, MicrosoftとIBM Watson Visual Recognitionを用い,軌跡データの画像を判別するための学習モデルを作成した.テストの結果,正答率は85.6%を示した.一方で誤認した判別には傾向が見られ,精度を高めるには学習させる画像の枚数を増やす必要があると考えられた.
Last updated: 2021年3月4日
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