平成30年度卒業研究テーマ

■ 研究テーマ一覧

学部4年生


■ 点字の表示桁数の違いが触読動作と理解に与える影響(蛯名 拓)

実験に使用した点字ディスプレイと点字用塩画像

  点字ディスプレイは1行しか表示できないため不便だという声が視覚障害者の間にある.そこで本研究では,点字の表示行数の違いが触読動作と理解にどのような影響を与えるのか,実験により検証した.実験は複数行表示及び1行表示の2条件で行い,被験者には課題文書の触読後,文書の内容に関する質問に答えてもらった.その結果,内容の理解度に差はなかったが,触読速度は1行表示の方が有意に遅かった



■触地図のサイズが標的探索時間に与える影響(大橋 航汰)

実験で使用した触図と実験結果のグラフの画像

 触地図のサイズが標的探索時間に与える影響を明らかにするため,触地図の触察実験を行った.触地図のサイズはA3,B4,A4,B5,A5の5種類で実施した.実験の結果,触地図のサイズが大きくなるほど,標的探索時間が長くなることが示唆された.一元配置分散分析を適用したところ,平均標的探索時間に有意な差があることが明らかになった.最も頻繁に現れた系統的な探索戦略は,水平方向の探索を行い,標的を触知できなければ,その軸を移動させ,同様の探索を繰り返すという戦略である.



■ 都道府県の形を対象とした線図とピースの触知しやすさの比較(小野 弘陛)

都道府県立体模型と都道府県線図の画像

 本研究室では.触地図を視覚障害者自身が手軽に作成できるシステムtmacsを開発,活用してきた.しかし,視覚障害者自身の利用を前提としているため,作成した触地図の編集が困難であるという問題や,地図データの更新を手動で行う必要があり,日本国内しか対応していないという問題があった.本研究では,これらを改善するため,新たなシステムの開発を行った.本システムは支援者向けに開発したことでユーザのニーズに合わせた表示内容の細かな調整を可能とした.また,インターネットから地図データを取得することで手動のデータ更新が不要で,世界中の地図データを取得することが可能となった.



■ Mapboxデータを利用した支援者向け触地図自動作成システムの開発(佐藤 慶)

自動作成された触地図の画像

 立体コピーで作成する触知棒グラフのデータを正しく読み取るために、どのような棒の塗りつぶしのパターンが適しているかを、視覚障害者を対象とした触察実験により検証した。実験では、黒色、濃い灰色、薄い灰色、白色という4種類の色による塗りつぶしと、点の直径・間隔を変化させた8種類のドットパターンの計12条件を用意した。背景及びグリッド線と棒の区別しやすさを調べるため、実験参加者には棒の計数及び、特定のグリッド線より右側に伸びている棒の計数という2種類の課題を実験内で行わせた。その結果、黒色の塗りつぶしの場合、両課題とも正答率と主観評価値は最も高く、触察時間も最も短かった。よって、立体コピーで作成する触知棒グラフにおいて、黒色による塗りつぶしが適していると言える。



■ 機械学習を用いたトイレのピクトグラムの検出(野口 優希)

トイレのピクトグラムと、正解画像と適合率、再現率の関係のグラフの画像

 トイレや非常口などを簡潔に表すピクトグラムという絵記号がある.これらは視覚表現であるため,視覚障害者がピクトグラムから情報を得ることは困難である.そこで,ピクトグラムの検出器を作成するための研究を行った.検出には機械学習を利用した.機械学習による画像認識を行うには,認識させたい対象を含んだ正解画像と,含まない不正解画像を多数用意する必要がある.本研究では,正解画像が120枚,240枚,360枚,480枚,600枚の時の認識精度を適合率と再現率を用いて検証した.その結果,適合率は480枚条件で最も高くなり,再現率は120枚以外の条件で8割程度と高くなった.



■ 高精細立体プリンタを用いた触地図自動作成システムの開発(車谷 憲太郎)

高精細立体プリンタに対応した触地図自動作成システムの画像

 触地図とは, 道路や建物を盛り上げることにより, 視覚障害者が触覚的に理解可能な地図である. 従来の立体コピー用紙を用いた触地図は, 細かい点や線の表現が難しいことが問題だった. 一方で昨年, 高精細サーマルヘッドを用いることで従来よりも細かな表現が可能な新たな立体印刷機が発売された. そこで, この新たな立体印プリンタを導入し, その高精細印刷を活かす触地図作成システムを開発した. さらにPOI記号や点字などをユーザが追加, 編集できる機能を追加した.



■ 摺動刺激の移動方向知覚と移動速度弁別に関する研究(今野 諒)

実験で使用したTBOXの画像

 皮膚への摺動刺激は、情報伝達を行う際の一つの手段となる。本研究では、移動速度を変化させることによって皮膚の知覚にどのような影響があるのかを検証した。実験では、高齢の視覚障害者7名を対象に、二つの実験を行った。まず一つ目に、移動する対象が左右どちらに移動したか判別する実験を行った。その結果、速度によらず高い正答率で左右の判別が可能であることが分かった。二つ目に、2種類の速度を提示し、速い/遅いを判別する実験を行った。その結果、提示した2つの刺激の速度の差によらず速度の弁別が困難であるということが分かった。



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Last updated: 2020年6月13日
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