触地図の周囲に目盛りを付し、触地図を分割することにより、触知記号の探索時間を短くする手法が提案・実証されているが、探索時間を最も短くする最適な分割数は明らかでない。そこで本研究では、触地図の分割数と探索時間の関係について、視覚障害者を対象とした実験により検証した。5種類の分割数の触地図を用意し、探索時間を計測した。その結果、触地図を縦3×横4に分割したとき、探索時間の中央値は最も短くなった。触地図の探索戦略を分析したところ、分割した地図を探索する戦略は、周囲の目盛りを使用するものと使用しないものに分類することができ、目盛りを使用しない戦略は目盛りを使用する戦略よりも探索時間が短いことが明らかになった。
 近年、タッチインタフェース端末が普及し視覚障害者の利用者も増えているが、端末のサイズが大きい場合、画面構成の把握に時間がかかり操作が困難になるという問題がある。そこで本研究では、非視覚的なタッチ操作に適したタッチインタフェース端末のサイズを調べることを目的として、端末を常用している視覚障害者と未使用の視覚障害者を対象とした実験を行った。実験では、四つの異なる画面サイズ(4 inch,4.7 inch,5.5 inch,7.9 inch)の端末を用意し、参加者に音声フィードバックを頼りにホーム画面上で16個のアイコンの探索を行ってもらった。その結果、画面サイズが4.7 inchの端末の探索時間が最も短く、タッチインタフェース端末の常用、未使用に関わらず主観評価が最も高かった。
 視覚障害者のグラフ利用の支援法として触知グラフが利用されてきた。本研究では視覚障害者が単独で利用でき、箱ひげ図の触知グラフを自動で作成するソフトウェアの開発に取り組んだ。ソフトウェアは利用者の触図作成環境に広く対応するために、立体コピーと点字プリンタ印刷の2種類から触知グラフを作成することができる。また、ソフトウェアは利用者の操作簡略化のために、インストール不要なWebアプリケーションで開発した。利用者はcsvファイルを選択し、グラフタイトルなどを入力することで容易に触知箱ひげ図を作成し、入手することが可能になった。
 立体コピーで作成する触知棒グラフのデータを正しく読み取るために、どのような棒の塗りつぶしのパターンが適しているかを、視覚障害者を対象とした触察実験により検証した。実験では、黒色、濃い灰色、薄い灰色、白色という4種類の色による塗りつぶしと、点の直径・間隔を変化させた8種類のドットパターンの計12条件を用意した。背景及びグリッド線と棒の区別しやすさを調べるため、実験参加者には棒の計数及び、特定のグリッド線より右側に伸びている棒の計数という2種類の課題を実験内で行わせた。その結果、黒色の塗りつぶしの場合、両課題とも正答率と主観評価値は最も高く、触察時間も最も短かった。よって、立体コピーで作成する触知棒グラフにおいて、黒色による塗りつぶしが適していると言える。
 近年、低温調理が流行している。低温調理が普及することで、献立の幅が広がり楽しみが増えると考えた。そこで本研究では、視覚障害者が安全に利用できる音声読み上げのある低温調理器具を開発した。この低温調理器具は、既存の調理器と組み合わせて使用するものである。調理器に温度センサを入れて現在温度を測定し、目標温度になるよう調理器の電源を制御する仕組みである。視覚障害者が安全に利用できるように、電源制御にはリモコンコンセントと赤外線LEDを用いた。更に、低温調理器具に音声読み上げを実装することで利用しやすくした。
Last updated: 2017年2月7日
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