近年、スマートフォンのようなタッチインタフェースが普及している。視覚障害者がタッチインタフェースを使って操作を行う場合、端末からの音声フィードバックを用いる。その際、触覚的な手がかりがないため、文字入力がしづらい、操作の習得に時間がかかるなどの問題が挙げられる。そこで本研究では、文字入力方法の違いによる習熟度への影響について実験を通して調べた。実験では被験者4人を対象に、タッチインタフェースによる4種類の文字入力方法を使い、文字入力の練習を5日間行った。5日間における文字入力速度と誤入力数の変化を計測することで、短い期間で習得可能であり、かつ精確な文字入力方法について検討した。
 スマートフォンのような、タッチインタフェースには視覚に依存するものが多いため、視覚障害者によるタッチインタフェースでの文字入力には、課題が多い。ここで、近年発展が目覚しいウェアラブルインタフェースを用い、点字入力を使用することで、文字入力を容易にできないかと考えた。点字入力とは、キーボードの6つのキーを使い、点字の6つの点に対応させて文字を入力する方法である。ここで、6本の指に、指輪型の入力インタフェースを用いることで、点字入力が可能になると考えた。そこで本研究では、加速度センサとマイコンを使って、指輪型点字入力インタフェースを試作した。この装置で点字入力使用者に入力をしてもらい、入力時の指の加速度を解析した。その結果をもとに加速度による点字入力インタフェースを開発した。
 近年その普及が目覚ましい3Dプリンタは、3Dデータをもとに立体模型を比較的安価に作製することができる。立体模型は、目で見て理解するだけでなく実際に触ることで形を把握することができる。そのため、視覚障害者支援にも応用され始めている。その例として地形模型が挙げられる。地形模型を作製するための素材や方法は数多くあるが、その中でどれが触知に適しているかまだ分かっていない。そこで本研究では素材、作製方法の違う4種類の模型を作製し、視覚障害者の方に触ってもらうことで、触知に適した素材、作製方法を検討した。また、作製にかかる時間、費用が現実的であるのかを調べた。
 近年、ランニングをする人が増え、視覚障害者の間でもランニングが広まっている。更に、自分の走行状態を走行中や走行後に確認できるツールはウェアラブル化したものが多くなった。しかし、これらは目視で確認するものがほとんどであり、視覚障害者は使うことが困難である。そこで本研究では、触知グラフ作成ソフトウェアを使用して走行データをグラフ化し、その有用性について評価する。2人の視覚障害者にGPSロガーを持ちながら走ってもらい、速度と標高のデータを記録した。作成したグラフを視覚障害者に触ってもらい、役立った点や改善点などの意見を集めた。
 盲学校では数学の関数を教えるとき触知グラフが利用されている。一般に触知グラフは盲学校の教員や点訳ボランティアによって図形点訳ソフトで作成されている。図形点訳ソフトの多くはGUIであるため、視覚障害者が単独で作成することは困難である。そのため視覚障害者が数学の関数を自習する際、関数のパラメータを変更したときの変化を触知グラフで即座に確認することが難しい。そこで本研究では視覚障害者が単独で関数の触知グラフを作成できるソフトをWebアプリとして開発した。これによって、一次関数、二次関数、反比例の触知グラフを作成できる。
Last updated: 2017年2月7日
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