点字盤と点筆を用いた点字打ちの一般的な練習で、打った点字を確認するためには点字盤から紙を外す必要があり、すぐに確認できないという問題がある。そこで本研究では、マイコンと音声合成LSIを用いて点字を打ったらすぐに音声で内容を確認できる1マス分の点字打ち練習機を開発した。それは視覚障害者向け展示会で打点可能なマスを増やしてほしいと意見をいただいた。その際の意見をもとに改良機である6マス分の練習機を開発した。この改良機を視覚特別支援学校の児童に使用してもらい、アンケートを実施した。
 立体コピーに点字を使用する場合、一般的に日本ライトハウスから提供されている点字フォントを使用する。しかしこの点字フォントは見やすさに配慮した寸法となっており、触読しやすさに配慮した寸法ではない。そこで立体コピーに用いた際の触読しやすさに配慮した点字フォントを作成し、点字使用者に対して触読実験を行った。その結果、点径が1.17 mmかつ点間隔が標準の点字の1.10倍のフォントにおいて読み時間が短く、誤読が少なく、読みやすさの評価が高いという結果が得られた。
 触れる星座早見盤とは、触覚のみで日付の設定と星座の認識ができる視覚障害者向けの学習用教材である。星座は点と線で表現されており、星座の形を理解するには点と点を結ぶ星座線を認識できることが重要である。そこで、点の種類や点間隔を変化させたときに、可触化した点と点の間にある線を触ってもらい、線の有無を判断してもらう実験を行った。その結果、点径が大きい場合は点間隔を広くしないと線の有無を認識できず、点径が小さい場合は点間隔が狭くても、線の有無を認識できることが分かった。
 提示された漢字の部品から熟語を想起してもらうという漢字クイズアプリケーションを作成しようと考えた。問題の例として、「羽」、「日」、「白」、「一」、「彳」、「寸」から「習得」を想起してもらうものである。 本研究では熟語を難易度別に提示するために、部品から熟語を想起する際の難易度に関わる要因を実験を通して調べた。その結果、単語親密度と部品数は正答率との間に相関係数の有意性が認められたが、漢字の学習段階と漢字の出現頻度は正答率との間には相関関係が認められなかった。
 方眼座標が存在する触地図は、標的の探索時間の短縮に有効であるということが先行研究より分かっている。しかし、最適な方眼座標数(分割数)は分かっていない。そこで本研究では、最適な分割数を求めるため、分割数が異なる5種類の触地図を用いて、標的を発見するまでの時間を計測した。その結果、触地図を縦3×横4に分割した時、探索時間が最も短くなった。他の分割数の場合では、目盛りの数え間違いによる触り直し、探索領域が広くなるということが原因となり探索時間が長くなったと考えられる。
 構内図の触知案内図を作成する手間を軽減するために、原図から壁部分のみを抽出したい。壁が他の領域と異なる色で彩色されている点に着目し、色を指標として壁のみを抽出する方法を検討している。壁は人の目では1色に見えるが、実際には画素値は変動しているため、色抽出を行う際には画素値に幅を持たせる必要がある。この適切な幅を決定するために、駅構内図の壁と壁に接触した領域の画素値を調べた。その画素値に様々な幅を持たせて壁部分を抽出した画像を比較したところ、持たせる幅の範囲を狭くしすぎることで生じる欠け、及び範囲を広げすぎることで生じるノイズがそれぞれ最も少なくなる適切な範囲を求めた。
Last updated: 2017年2月7日
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