まだ発足1年目の研究室ですが、学生たちが取り組んだテーマは、携帯電話、漢字、点字、触地図、タイマーと多岐にわたりました。学生たちは、視覚障害者に実際に会い、手引きをし、話をし、ニーズを聞きました。そして、自分たちが作った機器やシステムを使ってもらい、これに対する評価意見を聞きました。企業などにおける研究開発の過程をひととおり体験したことになります。
 ただし、定量的な評価まで進めなかったのは残念でした。今後、博士前期課程に進む人は来年度以降自分たちで、就職する人のテーマは、残った学生や新しく向かえる学生、または教員が引き継ぎ、きっちりと最後まで成し遂げていきたいところです。(2010年2月1日)
 多くの視覚障害者は、音声読み上げ機能のある「らくらくホン」という携帯電話を使っている。らくらくホンにはGPS機能があり、現在位置のGPS情報をメールで送信できる。この機能を利用し、ユーザがGPS情報の入ったメールを送ると、その周囲にある店や建物などの名前と距離、方角をメールで返信するサービスを開発した。検索範囲、店の種類、方角情報の有無はユーザが選択できる。このサービスにより、視覚障害者の歩行の支援や、外出への興味創出など生活の質の向上になると考えた。
 漢字の構成を知りたいという視覚障害者の要望を受けて、任意の漢字1文字を入力すると、その漢字の要素名とその位置を読み上げるWebアプリケーションの開発に取り組んだ。読み上げるとともに、当該漢字を大きなサイズで表示することで、全盲だけでなく弱視の人の漢字理解にも活用してできる。今回の開発では構成の説明だけでなく音読み・訓読み・詳細読みのデータも入れ、漢字の理解を促す。本研究・開発を通して、視覚障害者の方たちにも漢字の文化を再認識してもらえたらよいと考えている。
視覚障害者が規定時間内で講演等を行う場合、どのような対応方法が挙げられるだろうか? 視覚障害者でもタイマーを用いて時間を計れれば、規定時間内で講演を進行することができる。この要望に応じて、視覚障害者用のタイマーを開発した。このタイマーは、触知によって残りの時間を確認することができる。タイマーの時間表示部には凸点が貼られており、時間が経過する毎に凸点が一つずつ減っていく。残りの凸点を手で触って確認することで、時間の経過を知る事ができる
数分〜数十分の時間を計りたい際には、キッチンタイマーやストップウォッチなどが利用できる。しかし、これら一般の製品は、設定時間を液晶で表示するなど、視覚障害者には利用しづらい点がいくつかある。そこで、本研究では、任意の時間に設定ができ、規定の残り時間となったことを振動で知らせる視覚障害者用の振動式のタイマーを開発する。
今まで視覚中心の生活を送ってきた中途失明者にとって、点字を覚えて活用するには、相当な困難をきたす。本研究では、「簡単に点字を学習できること」に着目し、点字触読が簡単な文字で構成される単語を初期の点字学習教材とすれば、点字を「簡単に」読めることができ、学習意欲を維持・向上できるのではないかと考えた。そのため、触読初心者を対象とし、点字1マスごとの読み取りやすさを調べる実験を行った。実験より、点字学習ソフトウェアの開発や、中途失明者への「介助」と「自立」という両支援への貢献や、点字を読める喜びに繋げる。
視覚障害者のための触地図は,歩行訓練のルートや,出張・旅行で初めて訪れる地域について事前に知るのに有効である。私たちが現在,開発している触地図自動作成システム(Tactile Maps Automatic Creating System:TMACS)は、視覚障害者自身が操作できるWebアプリケーションである。初期のシステムは,立体コピー機による出力だけだったので,今回新たに点字プリンタで作成する点図触地図の開発に取り組んだ。作成した点図触地図を視覚障害者に触ってもらい、評価を行っている。
Last updated: 2012年12月19日
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