触読と触知による理解に関する国際会議

2004年11月,於ストックホルム教育研究所-スウェーデン

■ 概要

 2004年11月11日と12日の2日間,「触読と触知による理解に関する国際会議」に参加した。開催地は,ストックホルム教育研究所(スウェーデン)である。登録参加者数は約120名。参加者の多かった国は,開催地であるスウェーデンのほかに,近隣のノルウェー,フィンランドなどであった。白杖をもった方や,盲導犬を連れた方を10数名見かけた。これは,会議のテーマが,点字や触図など,視覚障害に関する内容だったためであろう。ほかに,電動車いすに乗った方も参加していた。

 会議は1つの会場のみで進められ,2日にわたり6つの演題の講演が行われた。そのうち,点字の触読時※に強く関わる講演「実時間で点字触読の様相(運指)を計測するシステムの開発」(Lund大学,スウェーデン)を紹介する。

 この発表は,点字触読の様相をコンピュータを利用して撮影・解析するシステムに関するものである。透明なプラスチックシートの上に特殊な樹脂で黒い点字を印刷する(写真1)。机面に開けた窓の位置にこれを置き,被験者に点字を読ませる。その運指の様子を,机の下に配置したカメラで撮影する。カメラはもう1台あり,こちらは机上に置いて,触読の様子を被験者の前面より撮影する。音読させるときは,音声をマイクで録音する。 実験後,対話型解析プログラムを使って,運指を解析する。これにはまず人が画像の中の指の位置をマウスで指定する。その後は,テンプレートマッチングのアルゴリズムにより,プログラムが指の位置を自動的に認識していく。点字のパターンもプログラムで認識され,アルファベットへ変換された後,元の位置に表示される。

 両手読みの点字使用者に,このシステムを使った予備実験に参加してもらった結果,全触読時間のうち57.5%は両手で読んでいる時間,23.9%は左手が読み,右手は次行へ移動する時間,9.4%は左手が移動をして,右手が読んでいる時間,9.2%は両手とも移動している時間であることがわかった。このように,新しいシステムの運用により,点字触読時の運指の定量的な解析が可能となったことが示された。

 このシステムを使ったもう1つの実験には5人の点字使用者が参加した。その結果は,朗読と黙読で読み速度が変わる人があることや,利き手と利き手ではない手で読ませたときに読み速度が変わる人があることなどが報告された。

 触知による理解についてはほかに,英国のミラー氏(Susanna Millar)が,触地図を読む際に,被験者に数種の弱視条件を課すことで,どのような視覚情報が触地図の理解を促進するかを調べた実験の結果について報告した。2日間の日程の最後には,聴講者から講演者へ質問するパネルディスカッションが行われた(写真2)。


※会議の参加は,文部科学省科研費(特定領域研究16091217)「点字触読時の触圧と運指に注目した効率的な点字触読指導法の考案」による。

透明板に印刷された点字 パネルディスカッションの様子

左から順に,写真1:透明板に印刷された点字,写真2:パネルディスカッションの様子

■ 発表演題(発表者)

■ インターネット情報


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Last updated: 2005年11月27日
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