海外の学会における情報保障 2004
■ 概要
障害のある人の学会・研究会への参加と活発な議論を促すためには,発表に関する情報保障が必要です。欧米の学術会議に目を向けると,障害者支援を取り扱う会議では手話通訳が付くことなど珍しくありません。そこで,これらの会議が提供する情報保障サービスを調べ,日本国内の学術会議における情報保障体制を整える資料としたいと思います。なお調査では,情報保障をとりわけ必要とする視覚・聴覚障害者への保障に焦点を当てました。
■ 調査した会議
米国
- CSUN(技術と障害者。主として視覚障害,AAC)
- RESNA(姿勢保持と移動(車いす))
- SIGGRAPH(CGと対話技術)
欧州
- ICCHP(障害者のコンピュータ利用)
- AAATE(支援技術の発展)
会議の概要
- 会議名称:The International Conference “Technology and Persons with Disabilities”(主催大学の略称からCSUNと呼ぶのが一般的)
- 主催:The Center on Disabilities at California State University, Northridge
- 開催頻度と回数:毎年開催。2004年で19回目
- 参加者:約4,000人
情報保障の内容
- 代替フォーマット(点字印刷・拡大印刷・FD(テキストファイル)・CD録音図書(DAISY))
- 代替フォーマットの作成と事務局への提出は講演者の責任で行う
- リアルタイム字幕と補聴デバイス
- 手話通訳
- 基調講演に配備。個別のセッションでは事前申込が必要
会議場の様子
左から順に,写真1:情報保障受付デスク,写真2:機器展示会場,写真3:速記タイプライタ
会議概要
- 会議名称:RESNA International Conference
- 主催:RESNA - The Rehabilitation Engineering and Assistive Technology Society of North America
- 開催頻度と回数:毎年開催。2004年で27回目
- 参加者:500人(2004年会議の事前登録社数)
情報保障の内容
- 手話通訳(ASL:アメリカ手話)
- 予稿集はCD-ROMで提供,各論文はHTML形式
- 捕聴デバイス(FMシステム)
- 代替フォーマット(点字印刷,拡大印刷,テキストファイル,リッチテキストファイル)
RESNA副会長の話
- 副会長(President Elect):Rory Cooper氏(University of Pittsburgh, School of Health and Rehabilitation Sciences)
- 「情報補償サービスを実施する理由は,障害者の支援が協会と会議の目的だから。法律が強制するからではない」
会議概要
- 会議名称:International Conference on Computer Graphics and
Interactive Techniques
- 主催:ACM SIGGRAPH(米国計算機学会の研究会の1つ)
- 開催頻度と回数:毎年開催。2004年で31回目
- 参加者:30,000人
情報保障の内容
左から順に,
図1:会議のオンライン登録ページには,特別なニーズが必要な方は,3週間前までにその内容を主催者に伝えるよう促している。
写真4:受付にSpecial Assistanceの窓口あり
写真5:展示会場では手話通訳を行っている風景を見かけた
会議概要
- 会議名称:International Conference on Computers Helping People with
Special Needs
- 主催:"integrated study" at the University of Linz,
Association BrailleNet, University Pierre et Marie Curie, Johannes
Kepler University of Linz
- 開催頻度と回数:隔年開催。2004年で9回目
- 参加者:275人(2002年会議の事前登録者数)
情報保障の内容
- 手話通訳(ASL:アメリカ手話)
- 開会式,閉会式,レセプション,及び聴覚障害者関連セッション
- 視聴デバイス
- 2004年会議のプログラム及びWebページには情報保障に関する記載はなし
会議概要
- 会議名称:European Conference for the Advancement of Assistive
Technology in Europe
- 主催:AAATE - The Association for the Advancement of Assistive
Technology in Europe
- 開催頻度と回数:隔年開催。2005年で8回目
情報保障の内容
- 元会長(2000年-2001年)のChritian Buhler氏(Fern Universitat教授)の話
- 「情報保障はできる範囲でやっている。手話通訳と点字印刷は事前に申し込みがあれば用意した。これまでのところ,すべてのセッションに手話通訳を付けたことはなかった。EU内には複数の言語があるが,各言語の通訳を用意することはできない。英語の手話のみ主催者側で手配し,他の言語の手話通訳が必要な参加者は各自で手配してもらう。予稿集は印刷物の形態である」
■ まとめ
代替フォーマット
- アルファベットの文化圏では,テキストが電子化された時点で,点字化と音声化の準備も整っており,全盲者への保障は手間も費用もほとんどかからない日本では,ソフトによる自動点訳だけでは不十分で,どうしても人手を要する
- 著作権の問題
プレゼンテーション画面
- プレゼンテーションの画面をロービジョン者に見やすくする工夫は見当たらなかった
手話通訳
- 熟練した人間が行う必要があり,費用もかかる
- 全体行事(基調講演等)は予め配備。個別のセッションは事前申し込みに応じて配備
■ インターネット情報
■ 発表原稿
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